彼女の夢は……夢はまだない。目下、彼女はそれを探している。
リネットは幼いころに店で働くようになってからずっと、カウンターを
通して外の世界を見てきた。ケフェウスという老人が経営するこの店は、
東と西の文化が交錯する街に建っていたので、彼女は様々な文化に触れながら
育った。今は衣服や鎧などを取り扱うことが多いリネットだが、
まだ一生をかけて極めたいと思える仕事には出会っていなかった。
一緒に店で働く者の中には、すでに専門の分野を持つ者も多く、
彼女は彼らと自分を比べて悩んだ時期もあった。
ケフェウス老人はそんな彼女にやさしく言った。こういうことはあせってはいけない。
誰かがそうだからといって、自分も同じでなければならないわけではない。
ゆっくりと納得のいく答えを探すべきだと。
リネットはそれから積極的に自分なりの答えを探し始めた。店のあちこちに顔を出し、話を聞いて回る。実際に仕事を手伝ってみる。店に顔を見せる客から外の世界のことを聞く。時にはちょっと外を歩いてみる……。仕事だけではなく、踊りや楽器の趣味、はては護身術などにまで手を出した。しかし、答えはまだ見つかっていない。様々なものが、リネットにとって魅力的に見えるのだった。
彼女の前に広がる世界。そこは可能性で満ち溢れているのだ。
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