二度目のソウルエッジ探索から帰国し、沿岸警備隊へと戻ったファンは、
隣国の侵略に備える日々を送っていた。
だが、ソウルエッジは救国の剣などではなく、亡国の剣であると報告をしたことにより、
国内の救国の剣を信望する一派から目を付けられ、
難癖を付けられるようになってしまう。
沿岸警備隊提督、李舜臣は部下のファンをよく庇ったが、
それでも彼は一月にわたる謹慎を申し付けられた。
ファンは提督より授けられた刀、蒼霹を返上し、警備隊を去った。
間違った報告をしたとは思っていなかったが、
尊敬する提督の期待には応えられなかったと考えたからである。
謹慎中、ファンは師の元に身を寄せていたが、ある日道場で何者かの気配を掴む。捕らえ、尋問により密偵が日本から潜入してきた者であることを知った彼は、翌日には上層部から呼び出されていた。日本がソウルエッジの捜索を画策しているというのだ。送り込まれたのは、捕らえた一人だけだとは考え難い。すでに日本は、ソウルエッジに関する情報を我が国から手に入れたに違いない。――救国の剣と呼ばれ、朝鮮が日本に対抗すべく探している武器としての情報を。
上層部は日本がソウルエッジを掲げて祖国へと侵攻してくるのを恐れていた。その日のうちにファンに新たな使命が告げられる。過去の経験を考慮しての抜擢であった。二度の旅の成果は実質ないに等しく、一部からはあの男では無理だとの声もあったが、それでも彼以上に国外のことを知る人物はいなかったのだ。
「世界を旅してソウルエッジを探しているであろう日本の間者を探し出し、これを倒すこと。その力が敵の手に落ちるのを未然に防ぐべし。そして可能ならば、ソウルエッジを持ち帰ること」
李舜臣提督はファンに使命を告げると、その手に再び蒼霹を手渡した。ファンはその意味を瞬時に汲み取った。提督は自分を信頼してくれている。この使命が国を護ることに繋がると考えてくれているのだ。
ソウルエッジが邪な存在であることを確信していた彼は、使命の旅に出る前に首都へ赴いた。首尾よく救国の剣信望者達が集めた邪剣の欠片と呼ばれる品を処分すべく持ち去る。盗賊の真似事は心が痛むが、故国に憂いを残しておくわけにはいかない。騒ぎが大きくなる前に、彼は首都を後にして西の国境へと向かい、国境を超えて広大な大陸へと踏み出した。
……力を持つ権力者が邪剣に魅入られたならば、その国が混乱に陥ることは想像が付く。たとえ敵国の民とはいえ、力なき者達が苦しむのをファンは良しとしなかった。ファンは邪剣の犠牲者をなくすことを心中で誓う。
謹慎中に身を寄せた成式道場で、彼はすでに弟弟子のユンスンと、師の娘ミナが彼に先立って西へと向かっていることを知っていた。旅先で彼らと力を合わせることができれば、何事も成し遂げられるに違いない。……そう、ソウルエッジの破壊すらも。
|