GBA『テイルズ オブ ザ ワールド なりきりダンジョン3』桝田 省治さんインタビュー

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桝田 省治さんプロフィール

有限会社マーズ 代表取締役
ゲームデザイナー
【代表作】
PS2『我が竜を見よ』
PS2『俺の屍を越えてゆけ』
PS『リンダキューブアゲイン』
等多数

お馴染み
吉積プロデューサー

インタビュアー:
ベンジャミン田中さん

GBA『テイルズ オブ ザ ワールド なりきりダンジョン3』の全体の構成を担当されたゲーム作家 桝田 省治さんに『テイルズ オブ』シリーズの広報担当ベンジャミン田中さんが、いろいろ聞いちゃいました。『テイルズ オブ』シリーズの吉積プロデューサーも同席して頂き、とっても濃い内容のインタビューになっています。桝田さんのファンも、『テイルズ オブ』シリーズのファンも必読ですよ!

桝田さんが電車通勤しなかったらこのコラボレーションは無かった!?
ベンジャミン田中さん
(以下 田中)

お忙しい中、ご足労頂きましてありがとうございます。

桝田 省治さん
(以下 桝田)

こんにちは。桝田です(笑)。

吉積プロデューサー
(以下 吉積)

どうも! 『なりきり3』でもプロデューサーをやってる吉積です(笑)。
桝田さんは、PS2『我が竜を見よ』やPS『俺の屍を越えていけ』といった、一筋縄ではいかない作品を世に送り出したゲーム作家と言うイメージがあると思います。その桝田さんが、なぜ『テイルズ オブ』シリーズ、それも『なりきり』シリーズに関わることになったのか?っと言うことに桝田さんのファンのみなさんも、『テイルズ オブ』シリーズのファンのみなさんも興味があるんじゃないかな?

田中

そうですね、それではまず桝田さんと『なりきり』シリーズの出会いからお伺いしましょう。

桝田

長くなりますよ(笑)。

田中

出来れば手短に・・・(汗)。

桝田

仕事の都合で、20年ぶりぐらいに電車で通勤することになったんです。しかも、通勤時間が1時間10分ぐらい。となると電車の中が、暇で暇でしょうがない。はじめは、小説とかを読んで暇をつぶしてたのですが、僕、読むのが凄く早いんで、一日に1,500円ぐらいかかちゃうんですよ。

田中

それは大変ですね(驚)

桝田

そう、こりゃたまらんっと言うことで、ゲームでもしようと思ったんですが、実は携帯ハードのゲームって、そんなに遊んだことが無かったです。そこで、当時いっしょに仕事をしていたアルファシステムさんに相談したとろ、「いま、うちでつくってる面白いゲームがあるんで遊んでみください」っと紹介されたのが・・。

田中

『なりきりダンジョン2』だったんですね!

桝田

はい(笑)。
それで実際に遊んでみたら、すごく面白くて、「電車の中でゲームっていうのはアリか」っと思ったんですよ。
でも、やっぱり僕もゲームデザイナーなので、面白いんだけど、ココはああしたほうが良い、あそこはこう出来るじゃないかと考えるわけです。そしたら、たまたま、共通の知り合いから、吉積プロデューサーを紹介してもらって、いろいろと意見の交換をしているうちに、「”何か”いっしょにやりませんか」という話になったんです。

吉積

最初は、とりあえず“何か”だったのですが、そういった成り行きも含めて、『なりきり』の続編で行きましょうという話に落ち着きました(笑)。まぁ、私が桝田さんのゲームのファンだったっていうのもあるんですが。

田中

へぇ〜。面白いですね!じゃぁ、桝田さんが通勤しなかったら・・・。

桝田

このコラボレーションは無かったでしょうね(笑)。

RPGはあんまり遊ばないんです。(桝田さん)
田中

では、次に、『テイルズ オブ』シリーズの印象などをお聞かせください。

吉積

それは、ちょっと難しいんじゃないかな?だって、桝田さん、『なりきり2』で初めて『テイルズ オブ」シリーズ体験だったみたいだから。

田中

えー! ホントに!?

桝田

実は、『テイルズ オブ』シリーズに限らず、RPGはあんまり遊ばないんです。自分はほとんどRPGしか作ってないのにね(笑)。

吉積

まず、そこからスタートしなきゃならなかったんですよ(笑)!

田中

それじゃ、大変だったんじゃないんですか?いろいろと。

桝田

まぁ、結構良くあるんですけどね。そんな感じで関わることになったタイトルは(笑)。でも、その場合は、そのタイトルは過去にどういう方たちが購入して、どういった売れ方をするのかとかを、データを見ながら、ある程度客観的に検証しながら作っていくんです。
当然、『テイルズ オブ』シリーズもデータをいっぱい貰って検証しました。それで分かったのが、このシリーズは、固定ファンがしっかり付いて、かつ相当幅広い層が遊んでいる、そしてキャラクター性も強いという事。もうひとつは、あのアクション性の高い戦闘システムで、ゲーマーっぽい方たちにも評価を得ているという事です。
ある意味、別のベクトルを持った層の両方から指示される面白いポジションに位置するタイトルだと分析しました。
絶妙というか、妙って感じのポジションですよね。狙ってそうなったのか、結果としてそうなったのかは分かりませんが(笑)。

田中

う〜ん。確かににそうですね。

桝田

そう分析した場合、とくに今回は『なりきり』シリーズの続編だし、いろんなシリーズのキャラが登場するので、ファンのみなさんにある程度納得していただく作品を仕上げるには、全ての作品を深く掘り下げる必要があると思うのですが、今から大量にある作品を全て網羅するのは無理(笑)!
そこで、何人かの『テイルズ オブ』シリーズに詳しいブレインを雇いました。

単に『なりきり2』にキャラを追加しただけでは、面白みがないし、それは僕じゃなくても出来きるなと思ったんですよ。(桝田さん)
田中

それでは、どんな感じで、製作を進めているのでしょうか?

桝田

まず僕が、「この場面で、こういう展開をしたいんだけど、これ合うキャラとシーンは何?」とブレインに投ると、ブレインが「それなら、このキャラとこのシーン」という感じでいくつかピックアップするんです。
その中から、僕がキャラとシーンを選択して、セリフを付け、それをまたブレインに投げると、
「このキャラはここではこう言わない。このキャラならこの場面でこうするはずだ」というチェックが入るんです。それの繰り返しですかね。

田中

手間が相当かかっているんですね。

桝田

そうですね。だけど、そのおかげで、『テイルズ オブ』シリーズの最大公約数的なものは満たしてると思うんですよ。
また、このタイトルは『なりきり2』の続編でもあるから、その面白さも踏襲しなければならない。その辺りも気を付けて製作しました。
でもね!単に『なりきり2』にキャラを追加しただけでは、面白みがないし、それは僕じゃなくても出来きるなと思ったんですよ。

田中

ということは、従来の『なりきり』シリーズの魅力を踏襲しながらも、桝田さんならではの新しい魅力が追加されていると...?

桝田

もちろんそうです。僕は、ゲームの製作に関して、二つの面をもっているんです。
一つは、全く何も無いところから、僕が面白いと思っている事を一つ一つ組み上げて形にする。そして、もう一つは、現在ある部品をパズルのピースのようにはめ込んで、僕のディレクションで、他の人がやらないような形にまとめることです。
今回の『なりきり3』は後者ですね。完成している『テイルズ オブ』シリーズという素材をいったんバラして、違う形で、違う面白さを持ったものにし、なおかつ『なりきり2』の面白さ加えたものを作るというかなり地味なんですが、パズルとしては凄く面白い仕事でした。

田中

お話を伺っていると、非常に大変そうに聞こえますが・・・。

桝田

確かに大変ですが、そういうことを考えるのが好きなんです(笑)。『なりきり2』を遊んでいて、「女の子だけのパーティがあったらいいな」とか、「美形キャラだけでパーティを組みたい」とか、ファンなら考えるだろうなって思ったんですよ。
また、それと、今作は登場するキャラの人数が増えるので、そうなると、1パーティだけじゃちょっとつらいなっと考えました。
そこで、複数のパーティが登場し、しかも、パーティの編成も出来るシミュレーションRPGに風の“パーティバトル”を思いついたんです。
僕なりのこのパズルの回答としてね。

ゲーム全体の構想は僕です。(桝田さん)
田中

桝田さんは、ゲームデザインの部分にも深く関わっているようなんですが、この『なりきり3』の製作で、アルファシステムさんやナムコの『テイルズ オブ』チームとの連携はどのように行われたんですか?

桝田

ゲーム全体の構想は僕です。アルファシステムさんは、戦闘、お店のメニュー、着替えるシステムとか、いわゆるシステム面全般を担当しています。
全体の設計図が出来た段階で、アルファシステムさんと行って、その時点で、システム周りの細かい部分やチューニングも含めて全て製作をお願いしています。
もちろん、その都度出てきた問題点は、僕からこうして、ああしてとお願いすることはありますが・・・。

田中

それでは、シナリオの部分はどうなんでしょう?

桝田

大元のシナリオは、僕が書きました。でも、僕はさっきも言った通り『テイルズ オブ』シリーズはあんまり詳しく無いので(笑)、まず、イベントをいくつか作った段階で、ナムコさんの『テイルズ オブ』チームや僕のブレインにそのイベントに合うマップをシリーズの中からいくつかピックアップしてもらって、その中から僕が選んでシナリオにはめ込むんです。
次にキャラの配置なんですが、これも同様に『テイルズ オブ』チームや僕のブレインにお願いして、「このマップでこのイベントならこのキャラしかありえない」、「こんなむちゃくちゃなことも解決出来るのはこのキャラだろう」と言うアドバイスをもらって、バランスを考えながら行いました。
それと、長いシリーズなので、人気あるキャラクターっているでしょう。やっぱり、そういうキャラクターは、見せ場を多くしたり、なるべく始めの方に登場させるようにもしています。
最後にセリフなんですが、これは『テイルズ オブ』チームと何度もやり取りをして、キャラクターのイメージを崩さないように心がけました。

田中

では、『テイルズ オブ』チームは、シリーズとしてイメージの統一と言う部分担当しているんですね。

吉積

そうだね。この『なりきり3』は、桝田さん、アルファシステムさん、そして『テイルズ オブ』チームがそれぞれの分野で、力を出し切って作ったって感じかな。

【後編に続く】