風のクロノア/開発者リレーエッセイ

今回のエッセイスト: 開発ディレクター・吉沢秀雄
-はじめに-
はじめまして。今回から「風のクロノア」の開発スタッフからの連載エッセイを始めます。開発秘話とか攻略法伝授とか、いろいろになると思いますのでお楽しみに。

「風のクロノア」で遊んでくださった方々から熱い励ましのお便りが届くたびに、この作品を創ってよかったなと、うれしく思う今日このごろです。特に最後まで遊んでくださった方々の、クロノアと苦楽を共にがんばってきた後の、あのエンディングに対しての感激の文面には、かえって僕のほうが感動しています。
-なぜクロノアというゲームを作ったのか?-
クロノアこの開発が始まった当時、僕が他のゲームに抱いていた疑問、というか不満は、ゲームにおけるストーリーなんて所詮雰囲気を盛り上げるためのおまけに過ぎないという考えのゲームが多かったことでした。映画のようなゲームを創りたいという思いはゲーム業界にかなりあるし、僕もその一人で、今までにも何本か(というより全部かも?)そういったゲームを創ってきたのですが、次第にそれはどうがんばっても「映画的」ではあっても、「映画」ではないわけで、自分たちはゲームを作っているのであって、映画を作っているわけではないという認識をするようになったのでした。そうなると「映画のようなゲームを創りたい」という思いと「ゲームは映画ではない」という認識の矛盾にちょっぴり悩んだりもしました。そのうちに、それならばゲームでしか語る事のできない話は作れないんだろうか、映画では描けない、ゲームという形でしか存在し得ないストーリーというものはできないだろうか、と思うようになり、そんな思いを抱きつつ考えつづけていたのでした。そんなある日、あのオープニングとエンディングを思い付いたのです。この話をメイン企画の小林に話したところ結構ノリ気で盛り上がり、久々に興奮を覚えたものでした。それからは一気にストーリーの骨子が決まり、途中のストーリーは二転三転しましたが、骨子自体はこの時のままで完成に至りました。
-涙の収録現場-
こうして始まったクロノアの開発は永きに渡り、ストーリーに関する興奮も冷めてきた頃に、エンディングムービーが完成したとのことで、声優さんにアフレコしてもらうことになり、スタジオに臨んだのでした。そして収録も最後のクライマックスに到ったとき、興奮は再び襲ってきて、しかもそれは最初に思いついたときの何倍もの勢いで迫ってきて、気がついたら涙が出てました。(でもその場にいたスタッフはみんな涙を浮かべてましたよ。決して僕だけじゃない)

それ以後何度もエンディングを見ているのですが、今でも涙が滲むことがあります。開発中のつらかったこと、楽しかったことなど、いろいろな思い出が溢れてくるからということもあるのですが、皆さんからのお便りを読ませてもらうと、同じように泣いてくれた人がたくさんいるようなので、それだけではなかったんだ、よかったと、思っています。
-メモリアル10-
「風のクロノア」は僕のちょうど10本目の作品にあたるので(エンドクレジットにわがままを言ってDEAR 10 MEMORIESと入れてもらっちゃいました。すみません)特別の思い入れがありましたが、皆さんのおかげでとってもいい思い出になりました。ありがとうございました。
-これから-
さて、「風のクロノア2」のストーリーでも考えますか。でも、どうしよう。また、悩みが増えてしまうぞ。そうだ、今回の作品では語っていないファントマイルの秘密がひとつあったっけ。
では、またいつか会いましょう。